家庭菜園では色々な雑草が生えてきます。もともと自生していたものに加え、風、鳥や虫たちが運んできた種が根付いていきます。冒頭の写真の中にもカタバミ、ドクダミ、コマツヨイグサ、シロツメクサ(クローバー)、ナズナが写っています。そして真ん中のスラリと伸びているのがノビルです。
「新板 形とくらしの雑草図鑑」によると、ヒガンバナ科の多年草。土手の草地、空き地、畑の周り、道ばたなどに生育。しばしば群生するとあります。特徴的なのは、葉をちぎって匂いを嗅ぐと、ニラに匂いがすることと、地下に丸い球根のようなものがあることです。この球根のようなもの、鱗茎(りんけい)と呼ぶそうです。そして家庭菜園にとって重要なのは、春には新しい葉が成長し、摘み草にされるというところ、つまり、食べられるのです。
私はノビルなどの雑草を美味しく食べる小説を読んだことがあります。有川浩さんの「植物図鑑」です。この本、ほとんど表紙のカスヤナガトさんのイラストに惹かれて買ったようなものですが、内容も、「雑草と呼ぶなんて失礼な。一つ一つ名前があって、美味しく食べられるものもあるんですよ」というメッセージが強烈で、印象に残っています。ちなみにこの本を読んだ後、カスヤナガトさんの1st作品集、「COLORS」を本屋でみかけ、こちらもほとんど衝動買いしてしまいました。
冒頭の写真のノビルが生えている場所は畑として使っている部分なので、ノビルにも退場してもらわなければなりません。そこで今日はこのノビルを収穫し、食べることにしました。
ノビル有川浩さんの「植物図鑑」には、ノビルの葉の部分だけでなく鱗茎の部分も使い、セイヨウカラシナも少し加えるパスタが紹介されています。これはこれで美味しそうですが、ノビルにはうちの庭の住人でいて欲しいので鱗茎の部分は別の場所に植えて、葉の部分だけ、ぬたにして食べました。それではこの作り方をご紹介しましょう。
1.水洗いする
このノビル、薹(とう)が立ち始めています。薹は硬いので、除きます。そして冒頭の写真のようにテントウムシがいるということは、アブラムシがいるかもしれないということなので、水につけおきして虫を追い出します。
2.茹でる
水を沸騰させてから、ノビルを入れて茹でます。ネギやニラに比べると筋っぽいので、ネギやニラよりは湯で時間は長めにします。お好みですが、4〜5分ぐらいが良いと思います。
3.ノビルを冷水で冷やして水気を切り、1〜2cmに切る
茹で上がったら冷水で冷やし、手でギュッと握って水気を切ります。そして食べやすいように1〜2cmに切ります。ネギやニラよりは短めです。ノビルは食べやすく改良された野菜ではありませんので、筋っぽいのはいたしかたないところです。
4.酢味噌を作る
以下の材料を混ぜ合わせ、ノビルに合わせる酢味噌を作ります。分量は以下を参考に、好みで調整してください。
・味噌:小さじ1
・酢 :小さじ1弱
・砂糖:小さじ1弱
5.ノビルと酢味噌を合わせる
ノビルと酢味噌をよく混ぜ合わせ、器に盛り付ければ完成です。
匂いはニラのようですが、味はニラほど強くはありません。ネギともまた違った趣です。意外と淡白と言えるかもしれません。春先のノビル、新しい葉が出てきたばかりで柔らかく、季節を感じることができるものです。山と渓谷社の「薬草」という本では、ノビルは全国に70以上の方言をもつほどに親しまれ、万葉の昔から春の幸として伝えられてきたとあります。家庭菜園では雑草に苦しめられることもありますが、無農薬の家庭菜園では、雑草の恵みにもありつけます。これも家庭菜園ならではの楽しみかと思います。
ノビルには薬効もあり、「薬草」という本では、全草を陰干しにしておいて、一つかみを適宜煎じて飲むと体が温まり、安眠剤になるとあります。また、皮膚病、打ち身、やけどには鱗茎をすりおろし、そのままか、あるいは小麦粉と練って貼る。毒虫に刺されたときは、葉のしぼり汁を塗りつけてもよいとあります。奥が深いです。
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